患者さんは来ているのに、思ったほど売上が伸びない。単価を上げたいけれど、何から手をつければいいのか分からない。値上げをしたら、患者さんが離れてしまわないか不安だ。整骨院・整体院の院長から、よくいただく相談です。
結論から言えば、単価アップは、まず単価に見合う価値を実際に高め、その価値に合わせて単価を上げることで成功します。中身が変わらないまま、伝え方だけを変えて単価を上げても、患者さんにはすぐに分かってしまい、その先の通院につながらないからです。
この記事では、客単価と分単価の考え方と、価値の中身から単価を上げていく7つのステップをお伝えします。
それでは、見ていきましょう。
客単価と分単価の違い
単価アップを考える前に、2つの単価の違いを押さえておきましょう。
| 単価 | 計算のしかた | 分かること |
|---|---|---|
| 客単価 | 月の売上 ÷ 月の延べ来院数 | 患者さん1回あたりに、いくらいただいているか |
| 分単価 | 1回の施術の料金 ÷ 施術にかかる時間(分) | 施術の1分あたりに、いくらいただいているか |
客単価は、1回の来院でいただく金額です。保険の施術に自費のメニューを組み合わせているかどうかで、大きく変わります。分単価は、施術の時間あたりの金額です。例えば、60分で6,000円の施術なら分単価は100円、30分で4,500円なら150円です。院長が施術できる時間には限りがあるので、分単価は、院の売上の上限を決める大切な数字になります。
大切なのは単価ではなく単価と数量のかけ算
ただし、単価そのものが高ければよいわけではありません。売上は、単価に、来院回数と患者数をかけたものだからです。

実際に、単価4,000円ほどでとても繁盛している院もあれば、7,000〜8,000円でうまくいっている院も、1万円を超えてうまくいっている院もあります。単価の高さに正解はなく、院の価値と、来てほしい患者さんに合った単価かどうかが大切です。
一方で、2万円を超える単価で続いている院は、私はほとんど見たことがありません。2万円を超えるには、ほかの院との違いが誰の目にも明らかで、その違いがはっきり伝わる、ごく専門性の高い院である必要があるからです。実現できたとしても、通院を続けてもらうのは難しいでしょう。
単価アップの7つのステップ
単価アップは、次の7つのステップで進めます。中でも大切なのが、ステップ2と3の「価値を見直し、高める」ことです。

1. 今の客単価と分単価を測る
単価アップは、今の数字を正確に測ることから始めます。測っていない数字は、良くなったのか悪くなったのかを判断できないからです。単価を上げたあとに「なんとなく売上が増えた気がする」では、次の一手を決められません。
測る数字は、次の5つです。過去3か月分を、月ごとに表にまとめましょう。
| 数字 | 出し方 | 例 |
|---|---|---|
| 月の売上 | 保険と自費をあわせた売上 | 150万円 |
| 月の延べ来院数 | その月に来院した回数の合計 | 300回 |
| 客単価 | 月の売上 ÷ 延べ来院数 | 5,000円 |
| 新規の平均来院回数 | 新規の患者さんが、通院を終えるまでに通った回数の平均 | 6回 |
| 分単価 | メニューごとに、料金 ÷ 施術の分数 | 60分6,000円なら100円 |
あわせて、院長が1か月に施術できる時間の上限も出しておきます。例えば、1日7時間、月22日施術できるなら、月9,240分です。分単価が100円なら、どれだけ予約が埋まっても、売上の上限は約92万円です。この上限が見えると、単価を上げるべきなのか、患者数を増やすべきなのかが判断できます。
2. 単価に見合う価値があるかを見直す
次に、今の単価に見合う価値を、患者さんに提供できているかを見直します。ここで見るのは、価値の「伝え方」ではなく、価値の「中身」です。
中身が変わっていないのに、伝え方だけを変えて単価を上げるのは、まっとうなやり方ではありません。患者さんは、受けた施術と、体がどう変わったかで院を判断します。言葉だけが立派で中身が伴っていなければ、すぐに見抜かれ、通院も紹介も続かないからです。
価値を見直すときは、サービスの質を測る代表的な考え方である「SERVQUAL(サーブクォル)」の5つの観点が役に立ちます。米国の研究者パラシュラマン氏らが提唱したもので、患者さんが受け取る価値を、抜けもれなく点検できます。
| 観点 | 見直すこと | 点検の例 |
|---|---|---|
| 確実性 | 約束した結果を出せているか | 初回に伝えた見通しどおりに良くなっているか |
| 安心感 | 知識と技術で信頼されているか | 検査の結果を、根拠とともに説明できているか |
| 寄り添い | 一人ひとりに向き合えているか | 患者さんの目標(試合、旅行など)を聞き、施術に反映しているか |
| 対応の早さ | 困ったときにすぐ応えられるか | 痛みが出たときの連絡や予約の取りやすさ |
| 目に見える形 | 院の環境や資料が整っているか | 院内の清潔さ、説明に使う資料や写真 |
5つの観点で「できている」「足りない」を正直に書き出してみましょう。足りないところこそ、次のステップで価値を高める伸びしろです。
3. 価値そのものを高める
見直して足りないところが見つかったら、価値そのものを高めます。マーケティングの研究では、顧客が感じる価値は「受け取るもの」と「支払うもの」を比べて決まるとされています(ザイタムル氏、1988年)。受け取るものを増やさずに支払うものだけを増やせば、感じる価値は下がってしまうからです。
価値を高める具体的な方法は、例えば次のとおりです。
- 検査を形にする:姿勢や動きを写真や動画で記録し、施術の前と後で並べて見せる。体の変化が目に見えるようになる
- 説明を形にする:体の状態、施術の計画、通院の見通しを1枚の紙にまとめて渡す。家に帰ってからも、家族に説明できる
- 通院の間を支える:家でできるストレッチを、その人の状態に合わせて1〜2つ伝える。動画で送れると、さらに続けやすい
- 技術を磨く:多い症状に絞って新しい施術を学び、良くなるまでの回数を減らす
検査の写真と説明の紙があれば、患者さんに「自分の体のことを、初めてちゃんと説明してもらえた」と感じてもらいやすくなります。価値の中身が高まれば、単価を上げても、患者さんは「この内容ならこの料金は当然だ」と受け止めてくれます。単価は、価値を高めた結果として上げるものです。
4. 施術の時間とメニューを組み直す
価値を高めたら、その価値に合わせて、施術の時間とメニューを組み直します。分単価を上げる一番の方法は、同じ時間の中で提供できる価値を高めることです。院長が施術できる時間には限りがあるので、時間の使い方を変えることが、そのまま売上の上限を引き上げることになるからです。
組み直しの例
| 組み直す前 | 組み直した後 | |
|---|---|---|
| メニュー | 60分のもみほぐし中心の施術 6,000円 | 検査10分+施術40分の症状別メニュー 6,000円 |
| 施術の時間 | 60分 | 50分 |
| 分単価 | 100円 | 120円 |
| 患者さんの価値 | 気持ちよいが、変化が分かりにくい | 検査で状態が分かり、変化も確認できる |
この例では、料金を変えずに、検査と説明を加えて価値を高めながら、時間を10分短くしています。患者さんの満足は上がり、院の分単価も上がります。空いた10分で、次の患者さんを受け入れたり、説明に時間をかけたりできます。
あわせて、院に多い症状ごとにメニューを分けることもおすすめです。腰痛、肩こり、スポーツのけがなど、症状ごとに検査と施術の流れを決めておけば、毎回の施術の質がそろい、必要な時間も読みやすくなります。
5. 自費のメニューを用意する
整骨院では、保険の施術だけでは、単価に上限があります。院の価値を高めた施術を、自費のメニューとして用意することで、客単価を上げられます。
自費のメニューを作るときは、次の3つを決めます。
- 誰のためのメニューか:例えば、慢性的な腰痛を繰り返している人、スポーツで競技に早く戻りたい人
- 何が変わるのか:保険の施術とは何が違い、どんな変化が期待できるのか
- なぜその料金なのか:施術の時間、使う技術、検査の内容など、料金の理由
例えば、保険の施術に、30分の骨格の調整を自費で加えるメニューを3,000円で用意すれば、そのメニューを選んだ患者さんの客単価は3,000円上がります。ただし、ここでも、自費のメニューに見合う価値があることが前提です。自費メニューの作り方は、整骨院の自費メニューの作り方で詳しく解説しています。
6. 値上げを正しく伝える
価値を高め、単価を上げることを決めたら、患者さんに正しく伝えます。大切なのは、値上げの理由を、価値の中身とあわせて伝えることです。
なぜ理由が大切なのか。人は、値上げそのものよりも、その理由が納得できるかどうかで、公平かどうかを判断するからです。ノーベル経済学賞を受けたカーネマン氏らの研究(1986年)では、費用が上がったことを理由にした値上げは公平だと受け止められやすく、需要があるからという理由の値上げは不公平だと受け止められやすいことが示されています。価値の中身を高めたことを理由にすれば、値上げは納得されやすくなります。
伝えるときは、次のように進めましょう。
- 時期:値上げの1〜2か月前から伝える。直前のお知らせは、不信感につながる
- 方法:院内の掲示に加えて、通院中の患者さんには、施術のときに直接声をかける
- 今の患者さんへの配慮:通院中の患者さんは、一定の期間、今の料金のままにするなど、配慮を示す
- 理由:何を変えたのか、何が良くなったのかを、具体的に伝える
値上げのお知らせの例
いつも当院をご利用いただき、ありがとうございます。当院では、より正確に体の状態を確認するため、今年から検査の内容を見直し、施術の前と後で姿勢の変化を写真で確認できるようにしました。この内容をこれからも続けていくため、〇月〇日より、施術料金を〇〇円から〇〇円に改定させていただきます。現在通院中の方は、〇月末までは今の料金で施術いたします。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
直接声をかけるときの例
〇〇さん、来月から料金が少し変わります。検査の時間を増やして、姿勢の変化を写真で毎回確認できるようにしたんです。〇〇さんは今通っていただいているので、〇月末までは今の料金のままで大丈夫ですよ。
場面ごとの告知文の例文と、伝えるタイミングは、整骨院・整体院の値上げの告知文で詳しく解説しています。
7. 単価を上げたあとの通院の続き方を測る
単価を上げたら、来院回数と患者数がどう変わったかを、必ず測りましょう。単価が上がっても、通院の回数や患者さんの数が大きく減っていれば、売上は増えていないからです。
目安になるのが、「単価を上げたとき、どこまでなら数量が減っても売上が減らないか」という計算です。単価を20%上げたなら、延べ来院数の減少が約17%までなら、売上は減りません。1 ÷ 1.2 = 約0.83で、数量が83%以上残れば、売上は元と同じかそれ以上になるからです。
| 単価の上げ幅 | 売上が減らない数量の減少の上限 |
|---|---|
| 10% | 約9% |
| 20% | 約17% |
| 30% | 約23% |
値上げのあと3か月間は、ステップ1で作った表に、毎月の数字を書き足していきましょう。数量の減少がこの上限を大きく超えている場合は、価値の伝わり方や、値上げの幅を見直す合図です。反対に、数量がほとんど減っていなければ、価値に見合った単価に近づけたということです。
整骨院・整体院の院長から単価アップについてよくいただく質問
値上げをすると患者さんが減りませんか?
価値の中身が変わらないまま値上げをすれば、減る可能性は高いでしょう。反対に、価値を高めたうえで、その理由を丁寧に伝えれば、減る患者さんは限られます。値上げのあとは、ステップ7のとおり、来院回数と患者数を測って判断しましょう。
回数券やコースは売ったほうがいいですか?
私個人としては、回数券は基本的におすすめしません。患者さんは自分の症状を良くするために来院しているので、良くなれば通院の回数は減っていくはずだからです。先に回数をまとめて買ってもらう意味は、基本的にないと考えています。
ただし、症状が良くなったあとのメンテナンスや、今の体の状態を保つための通院であれば、回数券やコースが患者さんにとって必要なこともあります。売るかどうかは、院の都合ではなく、その患者さんにとって本当に必要かどうかで決めましょう。
単価はいくらくらいが目安ですか?
決まった目安はありません。単価4,000円ほどで繁盛している院も、7,000〜8,000円の院も、1万円を超える院もあります。大切なのは、院の価値に見合っているか、そして単価と数量のかけ算で売上が成り立つかです。2万円を超える単価は、ごく専門性の高い院でなければ、続けるのは難しいと考えています。
保険の施術が中心の整骨院でも単価アップはできますか?
できます。保険の施術に加えて、院の価値を高めた施術を自費のメニューとして用意することで、客単価を上げられます。自費のメニューの作り方は、整骨院の自費メニューの作り方で詳しく解説しています。
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