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整骨院・整体院の価格設定の方法|「価格の掟」に学ぶ料金の決め方の原理原則

松澤 大輔執筆者松澤 大輔株式会社ネイク 代表取締役
受付のカウンターで画面の前に立っている女性

近くの院が5,000円だから、うちも5,000円くらいにしておこう。料金を上げたいけれど、患者さんが離れるのが怖い。整骨院・整体院の院長の多くが、こうした感覚で料金を決めています。

結論から言えば、整骨院・整体院の価格設定に、特別な方法はありません。価格は、マーケティングの一部であり、患者さんが感じる価値から決めるものです。価格の決め方には、業種を問わず通用する原理原則があり、それに沿って決めることが、院の利益と患者さんの満足の両方を守る、ただ一つの方法だからです。

この記事では、世界で数千社の価格戦略に関わり、「ザ・プライシングマン」と呼ばれたハーマン・サイモン氏の著書『価格の掟』などをもとに、価格設定の原理原則と、それを整骨院・整体院に当てはめた料金の決め方をお伝えします。

価格設定はマーケティングそのもの

価格はマーケティングの4Pの一つ

マーケティングには、「4P」と呼ばれる基本の考え方があります。1960年に米国のマーケティング学者ジェローム・マッカーシー氏が示したもので、マーケティングを、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの要素で組み立てるという考え方です。

マーケティングの4P。Product(製品・サービス:施術の内容、検査、説明)、Price(価格:料金、メニューの段階、初回の料金)、Place(流通:立地、営業時間、予約の方法)、Promotion(販売促進:ホームページ、検索、Googleマップ、口コミ)。価格は、マーケティングを構成する4つの要素の一つ
価格は、マーケティングを構成する4つの要素の一つ

価格は、この4つの要素の一つです。施術の内容、院の立地や予約のしやすさ、ホームページや口コミと切り離して、料金だけを決めることはできません。価格を決めることは、マーケティングを決めることであり、院の経営そのものを決めることなのです。

価格とは価値である

サイモン氏は、価格で最も大切なものを一言で問われたら「価値」、もう少し言えば「顧客にとっての価値」だと答えています。患者さんが払ってもよいと思う金額は、患者さんの目に映る院の価値を、そのまま映したものだからです。ラテン語の「pretium(プレティウム)」が、価格と価値の両方を意味するのも、そのためだとサイモン氏は述べています。

価格は利益を最も大きく動かす

サイモン氏は、事業の利益を動かすものは、価格、数量、コストの3つしかないと述べています。そして、この3つのうち、価格は最も注目されないのに、最も影響が大きいとしています。

このことは、数字でも示されています。マッキンゼーのマーン氏とロジエロ氏が2,463社の平均的な収益構造を分析した研究では、次の結果が示されています(Harvard Business Review、1992年)。

1%改善したもの 営業利益の増え方
価格 +11.1%
変動費 +7.8%
数量(販売数) +3.3%
固定費 +2.3%

価格をたった1%上げるだけで、営業利益は11.1%増える。反対に、価格を1%下げれば、営業利益は同じだけ減ります。整骨院・整体院は一般的な企業より利益率が高いため、ここまで極端な差にはなりませんが、それでも価格が利益に与える影響の大きさは変わりません。

値付けの3つの考え方

値付けの考え方は、大きく3つに分かれます。そして、その中で原則とすべきなのは、価値から決める考え方です。

値付けの3つの考え方。原価から決める(かかった費用に利益を乗せる。弱点:患者さんの感じる価値と無関係)、競合から決める(近くの院の料金に合わせる。弱点:価格の競争に巻き込まれる)、価値から決める(患者さんが感じる価値に合わせる。弱点:価値をつくり、伝える努力が要る。これが基本)。価値から決め、原価と競合で確認する
原則は、価値から決めること
考え方 やり方 落とし穴
原価から決める 施術にかかる時間や費用に、利益を乗せて決める 患者さんが感じる価値と関係がないため、安すぎたり高すぎたりする
競合から決める 近くの院の料金に合わせて決める 院の違いが料金に表れず、値下げの競争に巻き込まれやすい
価値から決める 患者さんが感じる価値に合わせて決める 価値をつくり、伝える努力が欠かせない

なぜ価値から決めるのが原則なのか。それは、患者さんが料金を払う理由が、院の費用でも近くの院の料金でもなく、自分が受け取る価値だからです。患者さんは、院の家賃や人件費を知りませんし、知ったところで料金に納得する理由にはなりません。近くの院より安いことも、価値が伝わっていなければ、選ぶ理由にはなりません。

原価から決めると、院の価値が高くても、その価値を料金に反映できず、本来いただけるはずの利益を取りこぼします。競合から決めると、院の違いが料金に表れず、最後は値下げの競争になります。価値から決めてはじめて、院の価値と料金がつながり、価値を高めるほど料金も上げられる経営になります。

ただし、原価と競合を無視してよいわけではありません。原価は「これより下げてはいけない下限」を知るために、近くの院の料金は「患者さんが比べる基準」を知るために使います。原価と競合は、料金を決める材料ではなく、決めた料金を確認する材料です。

良い価格設定の4つの原則

サイモン氏は、良い価格設定には「価値をつくる」「価値を数字で示す」「価値を伝える」の3つが欠かせないとし、さらに経営者の仕事として「価値を保つ」ことを挙げています。この4つを、整骨院・整体院に当てはめると、次のようになります。

原則 意味 整骨院・整体院でやること
価値をつくる 患者さんにとっての価値を、施術そのもので生み出す 施術の質を高め、検査と説明を丁寧にする
価値を数字で示す 価値を、目に見える形にする 姿勢の変化を写真で見せ、痛みの変化を数字で記録する
価値を伝える 患者さんの価値の感じ方に働きかける ホームページ、料金表、初回の説明で、院の強みを事実として伝える
価値を保つ 買ったあとの体験で、良い印象を長く保つ 通院の間のケアを伝え、良くなったあとも相談できる関係をつくる

料金を上げられるかどうかは、この4つがどれだけできているかで決まります。価値をつくらずに料金だけを上げれば、患者さんは離れます。反対に、価値をつくり、示し、伝え、保てていれば、料金に見合うと感じてもらえます。

整骨院・整体院の価格設定の8つのステップ

原理原則を、実際の料金の決め方に落とし込むと、次の8つのステップになります。

整骨院・整体院の価格設定の8つのステップ。1 院の価値を決める、2 1回の料金の下限を出す、3 近くの院を調べる、4 価値に見合う料金を決める、5 料金の段階をつくる、6 初回の料金を決める、7 料金表を載せる、8 分析して見直す
価値を決めるところから、分析して見直すところまで

1. 院の価値と来てほしい患者さんを決める

最初に、誰に来てほしいのか、その人に院のどんな価値を届けるのかを決めます。価格は価値を映したものなので、価値が決まらなければ、価格も決められないからです。同じ施術でも、「とにかく安く体をほぐしたい人」と「繰り返す痛みを根本から何とかしたい人」とでは、感じる価値も、払ってもよいと思う金額もまったく違います。

決めるときは、次の3つを書き出しましょう。

決めること 問い 例
来てほしい患者さん どんな悩みを持つ、どんな人に来てほしいか 繰り返す腰痛に悩む30〜40代の会社員
届ける価値 その人に、どんな変化を届けられるか 検査で原因を示し、再発しにくい体づくりまで支える
院の強み その価値を、なぜ自院なら届けられるのか 柔道整復師歴15年、腰痛の患者さんを多く診てきた経験

最後に、これを一文にまとめます。例えば、「繰り返す腰痛に悩む会社員に、検査で原因を示し、再発しにくい体づくりまで支える院」です。この一文が、料金の高さを決める物差しになります。

2. 1回の料金の下限を出す

次に、1回の施術でいただく料金の「これより下げてはいけない金額」を出します。価値から決めるといっても、1回の料金が院の費用をまかなえない金額では、施術すればするほど赤字になり、院を続けられないからです。

計算は、2つだけです。

1回の料金の下限の出し方(60分の施術の例)。1 1か月に実際に施術できる回数を出す:1日にできる施術7回(60分×7時間)×営業日22日×予約の埋まり具合7割=約108回。2 1か月の費用を施術回数で割る:1か月の費用60万円(家賃・人件費・院長の生活費など)÷約108回=1回の料金の下限約5,600円。1回の料金を約5,600円より安くすると、予約が7割埋まっても赤字になる
60分の施術なら、1回の料金の下限は約5,600円
  • 1か月に実際に施術できる回数を出す:1日にできる施術の回数に、営業日の数と、予約の埋まり具合をかけます。予約がいつも満杯になるとは限らないので、埋まり具合をかけることが大切です
  • 1か月の費用を、その回数で割る:家賃、人件費、材料費、光熱費に加えて、院長自身の生活費(給料)も、1か月の費用に入れます

こうして出した金額が、1回の料金の下限です。図の例では、60分の施術の下限は約5,600円です。これより安い料金にすると、予約が7割埋まっても赤字になってしまいます。30分や90分など、時間の違うメニューがある院は、同じ計算を1分あたりで行い、メニューの時間をかけて出しましょう。分単価の考え方は、整骨院・整体院の単価アップの方法で詳しく解説しています。

3. 近くの院の料金を調べる

近くの院の料金は、合わせるためではなく、患者さんが比べる基準を知るために調べます。患者さんは、料金を見るとき、無意識に近くの院の料金と比べているからです。その基準より高くするなら、高い理由を伝える必要がありますし、低くするなら、その理由もはっきりさせる必要があります。

調べるときは、ホームページとGoogleマップで、近くの院を5〜10院ほど選び、次の表にまとめましょう。

院名 施術の内容 時間 料金 1分あたり 強みとして打ち出していること
A院 もみほぐし中心 60分 5,000円 約83円 駅から近い
B院 骨格の調整 40分 6,000円 150円 スポーツのけが
自院 検査と骨格の調整 50分 ? ? 原因を検査で示す

料金を時間で割って「1分あたり」で比べると、見た目の料金だけでは分からない違いが見えてきます。そのうえで、自院の価値が、近くの院と比べてどこが違うのかを確認します。

4. 価値に見合う料金を決める

下限と、近くの院の料金を踏まえたうえで、自院の価値に見合う料金を決めます。ステップ1で決めた価値が、近くの院より高いと示せるなら、近くの院より高い料金にしても選ばれます。サイモン氏は、より高い価値を提供し、その分だけ高い価格をいただく「プレミアム価格」の考え方を紹介しています。

決めるときは、次の3つを満たしているかを確認しましょう。

  • 下限を上回っている:ステップ2で出した下限より高い
  • 違いを説明できる:近くの院より高いなら、その理由を事実として説明できる
  • 来てほしい患者さんが申し込める:ステップ1で決めた患者さんにとって、無理なく通える金額である

料金の幅は、3,000円でも1万円でも構いません。大切なのは、来てほしい患者さんが申し込みやすく、受けたあとに「この料金で良かった」と満足できる金額であることです。

5. 料金の段階をつくる

料金は、時間や内容で2〜3段階に分けると、患者さんが自分に合ったものを選びやすくなります。選択肢が1つだけだと「受けるか、受けないか」の二択になりますが、段階があると「どれを受けるか」という選び方に変わるからです。

段階 内容 料金の例
ベーシック 施術のみ(30分) 4,000円
スタンダード 検査と施術(50分) 6,000円
プレミアム 検査、施術、自宅でのケアの指導(70分) 8,500円

また、行動経済学では、3つの選択肢があると真ん中が選ばれやすくなる「極端の回避」という心理が知られています。院が一番すすめたいメニューを、真ん中に置くのが基本です。

6. 初回の料金を決める

初回だけ大きく割り引く「初回割引」は、おすすめしません。理由は3つあります。

  • 院の価値が低く見られる:最初に見た安い料金が、患者さんの中の「この院の基準の料金」になり、2回目以降の料金が高く感じられてしまう
  • 料金だけで選ぶ患者さんが集まる:安さに引かれて来た患者さんは、初回だけで来なくなりやすい(整骨院・整体院の初回荒らしもあわせてご覧ください)
  • 利益が削られる:価格が利益に与える影響は大きく、値引きはそのまま利益を減らす

割り引く代わりに、初回の検査と説明を充実させ、院の価値を最初にしっかり伝えましょう。例えば、初回は通常より時間を長めにとり、姿勢の写真を撮って原因を説明し、これからの見通しを伝える。その分の料金は、「初回は検査と説明の時間を含みます」と明記したうえで、通常の料金どおりにいただきます。初回で価値が伝われば、料金に見合うと感じた患者さんが、通い続けてくれます。

7. 料金表を作りホームページとGoogleマップに載せる

決めた料金は、料金表にまとめ、ホームページとGoogleマップに載せます。料金が分からない院は、それだけで不安を持たれ、選ばれにくくなるからです。

料金表には、金額だけでなく、次のことを書き添え、価値が伝わる形にしましょう。

  • 施術の時間
  • 施術の内容(検査、施術、指導など)
  • どんな悩みの人に向いているか
  • 保険が使えるかどうか(整骨院の場合)

金額だけが並んだ料金表は、患者さんに「どこが安いか」で比べさせます。内容と向いている人が書かれた料金表は、「どれが自分に合うか」で選ばせます。

8. 数字を分析して見直す

料金を決めたら、毎月、次の数字を分析します。価格は一度決めて終わりではなく、価値の高まりに合わせて見直していくものだからです。

見る数字 分かること
新規の患者さんの数 料金が、来てほしい患者さんにとって申し込みやすいか
メニューごとの選ばれ方 段階のつくり方が合っているか
平均の来院回数 料金に見合う価値を感じてもらえているか
客単価と利益 院の経営が成り立っているか

施術や検査を充実させて価値が高まったら、料金を上げることを検討しましょう。上げるときは、価値の中身とあわせて理由を伝えることが大切です。

値下げで利益を保つには何人の患者さんが必要か

料金を下げると、1回あたりの利益が減ります。その減った分を取り戻すには、値下げの前より多くの患者さんに来てもらう必要があります。値下げを考えたときは、その前に「何人増えれば、今と同じ利益を保てるのか」を計算しましょう。サイモン氏も、1件あたりの利益(価格から変動費を引いたもの)と、利益が出る数量の境目(損益分岐点)を使って、値下げの是非を判断すべきだとしています。

計算のしかた

  • 1回あたりの利益 = 料金 − 1回あたりの変動費(材料や消耗品など、施術1回ごとにかかる費用)
  • 今と同じ利益を保つのに必要な患者さんの増え方 = 値下げ前の1回あたりの利益 ÷ 値下げ後の1回あたりの利益 − 1

例えば、1回6,000円の施術で、変動費が約9%(約520円)の院を考えます。値下げ前の1回あたりの利益は約5,480円です。

値下げの幅 値下げ後の料金 1回あたりの利益 今と同じ利益を保つのに必要な患者さんの増え方
5% 5,700円 約5,180円 約6%増
10% 5,400円 約4,880円 約12%増

10%値下げしたら、患者さんが12%以上増えなければ、利益は減ってしまいます。月に300回施術している院なら、月に36回以上、施術を増やさなければなりません。しかも、院長が施術できる時間には限りがあるので、患者さんを12%増やせるとは限りません。値下げは、思っている以上に院の利益を削るのです。変動費の約9%は、経営データ集の個人の院の数字(売上876万円に対し、施術材料・消耗品76万円)をもとにした目安です。

整骨院・整体院の院長から価格設定についてよくいただく質問

近くの院より高くすると患者さんが来なくなりませんか?

価値の違いが伝わっていれば、高くても選ばれます。大切なのは、料金の違いに見合う価値の違いを、ホームページや初回の説明で、事実として伝えることです。

料金はいくらにすればいいですか?

決まった正解はありません。単価4,000円ほどで繁盛している院も、1万円を超える院もあります。この記事の8つのステップで、自院の価値と下限の料金、近くの院の料金から決めましょう。

一度決めた料金は変えてもいいですか?

変えて構いません。価値が高まれば、料金を上げることも検討しましょう。上げるときは、理由を価値の中身とあわせて伝えることが大切です。

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柔道整復師歴3年、コンサルタント歴9年、93社を支援した代表が全案件を担当

柔道整復師免許
平成24年4月3日に柔道整復師免許を取得

クライアント事例|東京都足立区アスリートゴリラ鍼灸接骨院

クライアント事例|岩手県矢巾町がじゅまる整体院

代表の松澤は、柔道整復師(平成24年取得)として接骨院で3年間、施術の現場に立ちました。その後、マーケティング支援会社のコンサルタントとして9年間、93社の集客を支援し、年間延べ4,000件のコンテンツ制作を支援してきました。セミナーの登壇は30回以上です。施術の現場とマーケティングの両方を知る代表が、最初のご相談から支援の最後まで、直接担当します。

AI検索における1位推薦率77.1%、新規予約は約2.6倍

07_AI順位別の推薦率

予約数_7月と8月

支援した東京都足立区の接骨院は、AIに症状ごとに院を探す質問をした188件のうち145件で1番目に推薦され、ホームページ経由の新規予約が、作り直す前の月25件から月64件へと約2.6倍に増えました。狙った98のキーワードのうち、1位は0件から21件に、10位以内は13件から65件に増えています。

口コミ37件でGoogleマップ1位、広告費0円で新規集客は月30件以上

Googleマップで「矢巾 整体院」と検索した画面。がじゅまる整体院が★4.6・口コミ37件で一覧の1番目に表示され、★4.9・口コミ177件の院より上にある

岩手県矢巾町の整体院は、口コミ37件で、口コミが177件の院を抑えて「矢巾 整体院」のGoogleマップで1番目に表示されています。近隣7エリアで上位に表示され、広告費0円で、新規集客は月30件以上です。

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→ 整骨院・整体院のメニュー表・料金表の作り方|選ばれる料金表の7つのポイント

→ 整骨院・整体院の値上げの告知文

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→ 整骨院・整体院の集客支援会社の選び方

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