健康セミナーや体験会を開けば、新しい患者さんが増えるのだろうか。一度開いてみたけれど、参加者は知り合いばかりで、その後の来院につながらなかった。整骨院・整体院の院長から、よくいただく相談です。
最初にお伝えしたいのは、イベントの目的は、その場で患者さんを増やすことより、院長に直接会ってもらい、院とのつながりを残すことにあるということです。整骨院・整体院を選ぶ人がいちばん知りたいのは、「この院長に体を任せて大丈夫か」だからです。院長の人柄と考え方は、チラシやホームページで読むより、会って話を聞くほうがはるかに早く伝わります。
私は、マーケティング支援会社のコンサルタントとして9年間、93社の集客を支援してきました。紙の媒体で反響を出す仕事も多く手がける中で、地域の人と顔を合わせる「地上戦」の集客ほど、院の土台として長く効くものはないと考えるようになりました。この記事では、整骨院・整体院がイベントやセミナーで集客するときの考え方と、開催から来院までの7つのステップを、そのまま使える数字の目安とあわせてお伝えします。
それでは、見ていきましょう。
イベントは院長に会ってもらう場
イベントの役割は、院を知った人に院長と会ってもらい、院とのつながりを残すことです。来院はその先にあります。

ホームページやGoogleマップ、チラシは、院を「知る」きっかけをつくります。けれども、知っただけで予約する人は、ごく一部です。体を触られる施術は、知らない人に任せるには勇気がいるからです。
イベントは、施術を受ける前の不安を下げる場になります。院長の話を聞き、院の中を見て、同じ悩みを持つ人と一緒に体を動かす。予約の前に「この院長なら大丈夫」と思える体験を、院長が直接届けられるのがイベントの強みです。
そして、会ったその場でLINEに登録してもらえば、院とのつながりが残ります。その日に来院しなかった人にも、次のイベントや院からのお知らせを届けられるようになります。参加者の数より、参加者のうち何人とつながりを残せたかを、イベントの成果として見てください。
イベントは、開業前後の集客とも相性がよい方法です。声をかければ来てくれる人のつながり(リスト)をどう育てるかは、整骨院・整体院の新規開業の集客方法でくわしくお伝えしています。
整骨院・整体院に向くイベント4選
整骨院・整体院が開きやすいイベントは、次の4つです。院の状況に合わせて、1つ選んで始めましょう。
| イベント | 主な相手 | 1回の人数の目安 | 準備期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1. 健康セミナー | 院を知らない地域の人 | 8人〜15人 | 6週間 |
| 2. 測定会・相談会 | 院を知らない地域の人 | 8人〜12人 | 5週間 |
| 3. 地域のお祭りやマルシェへの出店 | 院を知らない地域の人 | 30人〜100人 | 8週間 |
| 4. 患者さんと家族の体操教室 | 今の患者さんと家族 | 6人〜8人 | 5週間 |
1. 健康セミナー
院長が講師になり、暮らしの中の体の悩みをテーマに話をするイベントです。「デスクワークの座り方講座」「子どもの姿勢を見るポイント」「ウォーキングを長く続けるための靴の選び方」のように、参加する人の暮らしの場面からテーマを決めます。
院長の考え方と人柄が最も伝わる形なので、はじめてのイベントにおすすめです。時間は60分、定員は院内なら8人、地域の会議室を借りるなら15人を目安にしましょう。
2. 測定会・相談会
姿勢や体の使い方を一人ずつ見て、その結果をもとに相談にのるイベントです。一人あたり10分〜15分で区切れば、1時間に4人〜6人、2時間で8人〜12人を受け付けられます。
自分の体の状態が分かるという分かりやすい価値があるので、参加のハードルが低いのが特長です。結果を紙に書いて手渡すと、家に帰ってからも院のことを思い出してもらえます。
3. 地域のお祭りやマルシェへの出店
地域のお祭りや商店街のマルシェに、ブースを出すイベントです。院の外で、院をまったく知らない人に一度に会えるのが強みです。
出店者の募集の時期は催しごとに違うので、開催の2か月前には地域の商店会や自治会の案内を確認しましょう。短い時間で多くの人と話すことになるので、ブースでは施術は行わず、姿勢のチェックや体操の紹介など、5分ほどで終わる内容にしましょう。その場で予約を取ろうとせず、LINEへの登録と、次の健康セミナーの案内までを目標にします。
整骨院の場合、ブースに掲げる院名入りののぼりや、その場で配る案内のチラシも、院の外の広告として扱われます。ブースではLINEのQRコードを示して口頭で案内し、のぼりや配布物は出店の前に保健所に確認しましょう。
4. 患者さんと家族の体操教室
今通っている患者さんと、その家族や友人を招いて、自宅でできる体操を一緒に行うイベントです。患者さんが「一緒に行こう」と誘える場になるので、紹介が生まれやすくなります。
新しい人を集めるのが難しい時期でも、今の患者さんが参加してくれるので、少人数から始められます。患者さんにとっても、通院の合間に自分でできるケアが身につくという価値があります。
無料の施術体験会をすすめない理由
イベントの中には「無料で施術を体験できます」と人を集める方法があります。無料の施術体験会はおすすめしません。無料の施術を目当てに集まった人の多くは、2回目以降の施術にお金を払う理由を持っていないからです。
無料の施術で集まるのは、無料を求める人です。施術のあと、続けて通う理由が「無料だったから」しかなければ、2回目の予約は入りません。院長が時間と体力を使って施術をしても、残るのは院長の疲れだけになってしまいます。初回の割引で人を集めたときに起きる問題と、同じ形です。
イベントでは、施術そのものより、参加者が自分の体の状態と院長の考え方を知り、自宅でできるケアを持ち帰れることに価値を置きましょう。自分の体を知りたくて集まった人は、施術を受ける理由をすでに持っています。割引で人を集めることの問題は、初回だけで終わる患者さんが多い整骨院・整体院の記事でもくわしくお伝えしています。
整骨院の場合は、健康保険の決まりにも注意が必要です。保険の施術を無料にしたり割り引いたりして患者さんを呼び込むことは、受領委任の取扱規程で禁じられています。くわしくは、このあとの「整骨院がイベントを開くときの決まり」でお伝えします。
イベント・セミナーで集客する7つのステップ
ここからは、健康セミナーを例に、企画から来院までを7つのステップでお伝えします。測定会や体操教室でも、同じ順番で進められます。
1. 目的と相手を一つに決める
最初に、「誰に来てほしいか」と「イベントのあと、その人に何をしてほしいか」を一つずつ決めましょう。目的が決まっていないと、テーマも告知も当日の話も、すべてがぼやけるからです。
たとえば、次のように書き出します。
- 来てほしい人:院から歩いて15分以内に住む、デスクワークの30代〜50代
- イベントのあとにしてほしいこと:LINEに登録し、次回のセミナーにも来てもらう
- 数字の目標:参加8人、そのうちLINE登録7人
最初の目標は「つながりを残すこと」に置くのがポイントです。イベントのその場で予約する人は、ごく一部だからです。つながりを残せば、来院はその後の案内で生まれます。
2. テーマは参加者の暮らしの場面から決める
テーマは、症状の名前より、参加してほしい人の暮らしの場面から決めましょう。「肩こり」より「デスクワークの座り方」、「膝の痛み」より「ウォーキングを長く続けるコツ」のほうが、自分ごととして受け取ってもらえるからです。
暮らしの場面から決めたテーマは、院内で手渡すチラシやホームページで告知するときにも役に立ちます。症状の名前や効果をうたわずに、誰に向けたイベントかを伝えられるからです。
テーマが思いつかないときは、今の患者さんが施術中によく口にする悩みを10個書き出してみましょう。その中で、同じ悩みを持つ人が地域に多いものが、テーマの候補になります。
3. 会場と日時を決める
はじめての開催は、院の中で開くのがおすすめです。会場費がかからず、参加者に院の雰囲気を見てもらえるからです。ベッドを片づけて椅子を並べ、8人前後が座れるかを確認しましょう。
院が狭いときは、地域の会議室や公民館を借ります。公民館は、営利のための利用に決まりがあるので、予約の前に利用の規則を確認してください。公民館で開く場合は、当日にLINEへの登録を案内してよいかも、あわせて窓口に確認しましょう。くわしくは「整骨院がイベントを開くときの決まり」でお伝えします。
日時は、来てほしい人が動ける時間に合わせます。働く世代なら土曜日の午前、子育て中の人なら平日の10時〜11時、高齢の人なら平日の午後の早い時間が目安です。時間は60分にしましょう。
4. 4週間前から告知する
告知は開催の4週間前から始め、2週間前と前日にもう一度案内しましょう。参加を決めてから予定を空けるまでに、時間がかかる人が多いからです。
告知に使う場所は、次の5つです。
- 院内の掲示と、受付でのチラシの手渡し
- LINEで今の患者さんに案内し、家族や友人を誘ってもらう
- 院のホームページのお知らせと、Googleビジネスプロフィールの投稿
- 院の近くへのチラシの配布
- 地域の掲示板や、協力してくれるお店へのチラシの設置
整骨院の場合、上の4つ目と5つ目のように院の外で配るチラシは広告として扱われ、セミナーの案内を載せること自体が難しくなります。Googleビジネスプロフィールの投稿も、院の外のチラシと同じ基準で内容を考えましょう。整骨院は、院内で手渡すチラシと、ホームページ、LINEを告知の中心にしてください。整体院は院の外でもチラシを配れますが、症状の名前や効果をうたう書き方は避けましょう。
最も参加につながりやすいのは、今の患者さんからの誘いです。受付で「ご家族で座り方に悩んでいる方はいませんか」と一言添えて、ご本人用とご家族に見ていただく用の2枚を手渡しましょう。患者さんに院の外で何枚も配ってもらうと広告とみなされるおそれがあるので、お願いするのはご家族や身近な人に見せてもらうところまでにします。
院内で手渡すチラシには、テーマ、日時、会場、定員、参加費、内容、申し込み方法、院長の顔写真と名前を載せます。院長の顔が見えると、どんな人が話すのかが分かり、参加のハードルが下がります。

この例は、院内で手渡す用のチラシです。整骨院が院の外で配るチラシには、参加費を含めて、この内容をそのまま載せることはできません。
チラシの作り方と配り方は、整骨院・整体院のチラシ集客でくわしくお伝えしています。
5. 当日は話と体験と質問を60分で組み立てる
60分のうち、院長の話は自己紹介を含めて25分までにして、残りの時間で参加者に体を動かしてもらい、質問を受けましょう。聞くだけのセミナーより、自分の体で試したセミナーのほうが、内容を覚えていてもらいやすいからです。
- はじめの5分:院長の自己紹介と、今日のゴール
- 話の20分:暮らしの中で体に負担がかかる理由と、負担を減らす座り方
- 体験の20分:座り方のチェックと、自宅でできる体操を一緒に行う
- 質問の10分:一人ずつの悩みに答える
- 終わりの5分:LINEへの登録とアンケートのお願い
話の中で、施術や回数券を売り込むのはやめましょう。売り込まれたと感じた参加者は、次のイベントにも院にも足を運びにくくなるからです。院の紹介は、自己紹介の中で1分あれば十分です。
6. その場でLINE登録とアンケートをお願いする
終わりの5分で、LINEへの登録と、紙のアンケートへの記入をお願いしましょう。つながりを残すのは、参加者の気持ちが最も高まっている当日がいちばんです。
LINEに登録してもらう理由として、「今日の体操を動画で送ります」のように、登録した人がすぐに受け取れるものを用意しておきます。参加者の8割以上が登録することを目標にしましょう。
アンケートでは、次の3つを聞きます。
- 今日の内容で、いちばん役に立ったこと
- いま体のことで困っていること
- 次に聞いてみたいテーマ
困っていることを書いてくれた人には、後日のLINEで一人ずつ返事をします。次に聞いてみたいテーマは、4回目以降のセミナーのテーマの候補になります。
アンケートの用紙には、「いただいた内容は、ご返事と次回のご案内にだけ使います」のように、書いてもらった情報の使い道を書き、その下に「上記の目的で使うことに同意します」のチェック欄を設けましょう。体の悩みは健康に関わる個人情報なので、使い道を示して同意をもらうことが大切です。参加者も安心して悩みを書けるようになります。
7. イベントのあとに連絡して数字で振り返る
イベントのあとは、当日中にお礼、3日以内に約束した動画、2週間後に次回の案内を、LINEで送りましょう。記憶が新しいうちに連絡をすると、院のことを覚えていてもらえるからです。
そして、イベントごとに次の数字を記録します。
| 記録する数字 | 目標 |
|---|---|
| 参加者の数 | 定員の8割 |
| LINEに登録した人の数 | 参加者の8割 |
| 3か月以内に新しく来院した人の数 | 院に通っていなかった参加者の2割〜3割 |
目標の数字は、はじめて開くときの目安です。3回分の実績がそろったら、自院の数字で目標を置き直しましょう。
あわせて、チラシの印刷代、会場費、資料代の合計も記録します。たとえば、院内で開き、チラシの印刷に3,000円、資料に2,000円をかけたとします。参加した8人のうち、院に通っていなかった人が7人で、そのうち2人が3か月以内に来院すれば、新しい患者さん1人あたりの費用は、5,000円÷2人で2,500円です。LINEに登録した人には、来院しなかった人も含めて、次のイベントや院からのお知らせを届けられます。一度きりの広告と違って、イベントのたびにつながりが積み上がっていくのが、イベント集客の強みです。
まずは同じテーマで月1回、3か月続けましょう。1回だけでは、参加者が少なかった理由がテーマなのか、日時なのか、告知なのかを判断できないからです。3回分の数字がそろったら、目標との差がいちばん大きかった項目から見直し、4回目からはアンケートの「次に聞いてみたいテーマ」をもとにテーマを変えていきます。
当日の様子の写真をホームページやSNSに載せるときは、写っている人に必ず事前に了承をもらいましょう。顔が写らない角度で撮るのも一つの方法です。
整骨院がイベントを開くときの決まり
整骨院がイベントを開くときは、告知と当日の内容の両方で、守るべき決まりがあります。
1. 院の外で配るチラシは整骨院の広告
整骨院が院の外で配るチラシや、お店・地域の掲示板に置くチラシは、整骨院の広告として扱われます。柔道整復師法第24条と、厚生労働省のあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関するガイドラインにより、整骨院の広告に書ける内容は、施術所の名前、所在地、電話番号、施術日、施術時間などに限られています。症状の名前、施術の効果、施術の料金、技術の説明は書けません。セミナーの案内は書いてよい内容に含まれていないので、院名を入れた院の外のチラシでセミナーを告知するのは、原則として難しいと考えてください。
一方で、同じガイドラインでは、施術所の中で掲示したり配ったりするチラシと、院のホームページは、原則として広告にあたらないとされています。そのため、セミナーの詳しい案内は、院内で手渡すチラシとホームページで行いましょう。院の外で何かを配るときは、作る前に必ず保健所に確認してください。「腰痛が改善するセミナー」のように症状の名前や効果をうたう書き方は、どの媒体でも避けましょう。整骨院の広告の決まりは、整骨院・整体院の広告の決まりでまとめています。
2. 保険の施術の無料や割引での呼び込みは禁止
健康保険を使う施術を、イベントで無料にしたり割り引いたりして、患者さんを呼び込むことはやめましょう。受領委任の取扱規程で、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供や違法な広告によって、患者さんを自分の施術所に誘うことが禁じられているからです。
イベントでは施術を行わず、話と体験と相談で価値を届けましょう。無料の施術で人を集めないことが、決まりの面でも、集客の面でも、院を守ることにつながります。
3. 来場者へのプレゼントの上限
参加費が無料のイベントで、来場者全員にもれなく配るプレゼントは、景品表示法の「総付景品」にあたり、金額の上限があります。消費者庁の説明では、購入を条件とせずに来店者へもれなく配る景品は、取引の金額を原則100円とみなし、上限を200円としています。院でふだん行っている取引のうち最も安いものの金額を基準にできる場合もありますが、まずは1人200円までを目安にし、迷ったら消費者庁や都道府県の相談窓口に確認しましょう。
整骨院の場合は、品物で保険の患者さんを呼び込むことが、受領委任の取扱規程の誘引の禁止に触れるおそれもあります。プレゼントを用意するより、当日の体操をまとめたプリントのように、イベントの内容を持ち帰れる資料を渡すほうが、決まりの面でも安心で、参加者にも喜ばれます。
4. 公民館は利用の規則を確認してから予約する
公民館は、社会教育法第23条で、営利事業を援助することが禁じられています。そのため、院の宣伝や勧誘を目的とする利用を断っている公民館もあります。予約の前に利用の規則を読み、内容が分からないときは窓口に確認しましょう。
ここまでのうち、1と2は整骨院の決まり、3と4は整骨院と整体院の両方に関わる決まりです。整体院は柔道整復師法の対象外ですが、厚生労働省のガイドラインは、資格を持たない施術者にも症状の名前や効果をうたう広告をしないよう求めています。「腰痛が改善するセミナー」のような書き方は、整体院でも避けましょう。
整骨院・整体院の院長からイベント集客についてよくいただく質問
参加者が集まらないときはどうすればいいですか?
まず、今の患者さんに直接声をかけましょう。参加者が集まらないときは、告知が届いていないことがよくあります。受付で一人ずつ案内し、家族や友人を誘ってもらいましょう。はじめは3人〜5人の参加を目標にします。少人数でも開催し、参加者の声をもとに次回のテーマを決めていきましょう。
院内が狭くても開けますか?
開けます。4人〜5人の少人数なら、ベッドを片づければ多くの院で開催できます。少人数なら一人ずつの質問にていねいに答えられるので、参加者の満足度を高めやすくなります。人数を増やしたくなったら、地域の会議室を借りましょう。
何回続ければ成果が分かりますか?
月1回、3か月続けてから判断しましょう。1回目は告知の届き方が安定せず、参加者の数がぶれやすいからです。3回分の参加者の数、LINEの登録の数、来院の数をそろえて見ると、続けるべきかどうかが分かります。
イベントで回数券を売ってもいいですか?
イベントの場では、回数券や施術の売り込みはやめましょう。参加者は学びに来ているので、売り込まれたと感じると、次から足を運びにくくなるからです。施術を受けたいという人には、後日の予約を案内し、来院したときに体の状態を見てから必要な通い方を説明しましょう。
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